1月の夜、外は寒い。喫煙しながら手を擦り合わせて暖める。オミクロンの正面の灰皿が配置されたスペースで、たにさえかは「多忙ガール!」「turbo girl!」などと昼間考えついた決めゼリフとポーズを披露している。その姿は滑稽でとても素敵なのだけれど、いかんせんテンションが低すぎて全然気の利いたコメントを思いつけない。乾いた笑いを浮かべながら思案していると、コテージから彼女が呼んだ後輩が歩いてやってきた。いつもと比べると幾分小さくなった気がする。そして少し臭う。「こうも残留が続くとやってらんないっすよ」と言う彼の言葉には覇気がない。それでもまあ、彼とたにさえかの間では定番化しているジョークなどを続けていると、多少は元気になってきたようで、僕は安心してコーディングに戻った。
「あそうだ、ねぎぽさーん」彼が言った。
「なーに?」
「よく馬鹿は風邪引かないって言うじゃないですか、あれ何でだと思います?」
「ああ、えーと、馬鹿だから、風邪を引いたことに気付かない、とか?」
「いやそれもあるんですけーどー、俺が最近気付いたのは違うんすよ、馬鹿な奴ってすぐ物事を忘れたりするじゃないですか」
「うんうん」
「馬鹿の度が過ぎると、自分の身に起きた結構重要なことまで忘れちゃうんですよ。例えば風邪」
「あーなるほど、つまり、風邪を引いて死にかけたこととかも忘れちゃうのか」
「そうそうそう!いやー、俺こないだバイト先で最近風邪引いてないなーとか言ったらですね、先輩が『お前、一ヶ月ぐらい前に大風邪引いてごろごろ転げ回ってたじゃん』って。まあ俺自身が立派な証拠っすよ−」なんて言って、彼、腐臭のする息を吐くので、僕とたにさえかは顔を見合わせた。何しろ、彼、馬鹿の度が過ぎて、先月自分が死んだことも忘れてしまった。
本人がpologのネタにしてくれと言ってたので。