「世の中、間違ってる」
強い酒を飲み過ぎて、気管を焼いてしまった彼はひゅうひゅうと喉を鳴らしながらそう言った。
「何故そう思う?」僕は言った。僕と彼は、今年起こった不幸な出来事ランキングを、二人でカウントダウンしていた。僕が僕に今年起こった2番目に不幸な出来事について語り、彼の番になった時に、彼は唐突に唾棄すべき現実に付いて唾棄したのだ。
「何故、僕の隣には女の子が居ない?」
「知らねえよ」僕は言った。いつもの事だと思った。
「何故、僕の両隣には女の子が居ない?」
「両隣?」
「そう、双子の女の子が」
双子の女の子?
僕は双子の女の子に好かれたことがある。二人とも同じゼミに所属していて、二人が僕を呼び出して、同時に僕にこう言ったのだ。「どっちか、一人を選んで」と。
僕はそう言うような話を彼にしたのだが、彼はsmirnoffをしこたま飲んでいたせいか、ずっと似たような事を繰り返し喋っていた。「双子の女の子と寝るのはきっと最高の気分だろうな。その同一性の中に、僕だけが見出しうる差異を、須く、掘り出してやるんだよ。性的な反応に限って言えば、人間はその深く隠し持った決定的な自己を表現し得るからな」僕は一卵性双生児の両方と寝た数少ない男性として、このような見解には幾つかの異議がある。僕は結局妹の方を選んだのだが、姉の方と後日、ふとした事で二人きりで酒を飲んだ時に、彼女はこう言った。
「私とあの子が、どう違うって言うのよ」
どこも違わない。何も違わない。僕は僕が決定し得る判断基準に於いて、女性たちをクラスタリングするのだから。僕が妹を選んだのは、妹が着ているトレーナーに書いてある番号が「18」で、姉の方が「19」だったからだ。結局僕はその晩に、姉とも寝た。そこには何の違いもなかった。隠し持った自己なんて、発見できなかった。それが、今年僕に訪れた最も不幸な出来事だった。